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小説家タカノカオルのフリー小説置き場。 どうぞご自由にご覧くださいませ♪ 一言だけでも感想いただけると泣いて喜びます。
フリー小説の邯鄲
虚言日置〈キョゲンヘキ〉Act.2
2007-09-25-Tue  CATEGORY: 【連載中】虚言日置〈キョゲンヘキ〉
Act.2 「嘘〈本当のことは内緒〉」

 ジューサーの中にキャベツとほうれん草、バナナを入れる。ほどよく混ざったらハチミツと豆乳を入れる。
 抹茶のような色をした野菜ジュースを、グラスの中に注いで、ストローを使って飲む。
 あたしはこんな野菜ジュースが好きだったわけじゃないのだけれど、しばらく一緒に住んでいた姉が毎日飲んでいたのを見ていると、何となく自分まで習慣になってしまった。

 姉もよく言っていたけれど。

 あたしは、たぶん人の真似をして生きている。
 あたしのライフスタイルは、真似をしていなければ生活ができないほど、人の習慣を切り貼りして成り立っている。

 それは不幸なことでも何でもない。
 ただ単純に、あたしの生き方というだけ。

 
 その日、高校時代の親友から手紙が届いた。
 ポストの中を見ると、サンリオのキャラクターものの封筒が届いていた。シールはプリクラだ。
 彼女はこういう、自己顕示欲の強いタイプだ。
 強引でワガママ、幼稚。
 けれど、やることはしっかりやっている、侮れないタイプ。

 彼女の手紙を全て読み上げるなんてそんなつまらないことはやめて(全部で11枚あったんだから、あたしだって読むのは辛かった)、一文だけ引用してみると。

 ―――誰かから何かを奪うっていうのは、最高に悲しいことね。

 彼女は浮気相手と結婚した。
 浮気相手の奥さんは、自殺した。
 けれど、彼女の文面に悲壮感はない。
 むしろ嬉々とした文字、爽やかな文章が連ねられていた。
 

 だから、松浦茂が婚約している相手がいるんだと話した時、あたしは気づいたのだ。
 あたしは、今度は彼女の模倣をしたいと心から望んでいることを。



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